地に堕ちたスイスの信用と劣後債 |

(クレディ・スイスの金地金20gインゴット。筆者蔵)
「スイス」といえば世界金融界での信用度は誰が見てもトップだった筈なのだが、今回のクレディ・スイス救済劇でその評価は一気に下降線を辿っているようだ。
経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイスが同業最大手のUBSに買収という形で救済されることが決まったのは皆様ご承知の通り。こんな場合救済される順番は預金>債権(シニア債~AT1債)>株式となるのに、スイス金融当局は“掟破り”の措置に踏み切った。
すなわち劣後債「AT1債」約160億スイスフラン(約2兆3000億円)の価値をゼロとし、クレディ・スイスの株主にはUBSの株を割り当てるというのである。
ロイター3月27日配信記事↓
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情報BOX:クレディ・スイス「AT1債」、無価値の波紋
(https://jp.reuters.com/article/creditsuisse-bond-idJPKBN2VT02R )
経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイスを同業UBSが救済合併するのに当たり、スイス当局がクレディ・スイスが発行した劣後債の一種「AT1債(その他Tier1債)」の価値をゼロにすることを決定すると、市場には戸惑いが広がった。(以下略)
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記事にもあるように欧州各国の金融当局は従来の原則は変わらないと表明し、また香港とシンガポールも同様に従来の弁済順位を絶対に守ると言っている。そう言っておかないと収拾がつかないという事もあるだろうが、言外に今回のスイス金融当局主導の合併劇が如何に異常なものであったかを物語っている。
そして他のヨーロッパ各国の銀行が発行したAT1債が軒並み売りを浴びる事態になっている。これはマーケットが劣後債自体の信用性に疑問を持ったと同時に、どんなに各国の金融当局が否定しようとしても一度起こってしまった事態(=前例)が今後絶対に繰り返されないという保証が無いと見ていることに他ならない。
ひとたび毀損してしまった信用を取り戻すのは容易ではない。スイス金融当局も当然それは理解していただろうが、その信用維持以上に拙い事態が進行していたのだろう。内外の識者がその事情について述べているものの、おそらく全貌が明らかになるのはもっと先のことだろう。
かねてより筆者は「博奕と名の付くものはどんなに公正性・公明性を謳っていても、常にイカサマの存在を疑ってかかるべきである」と主張している。金融も同様で、特に債権などは妙に利回りのいいものなんぞ証券会社がどんなに勧めても疑ってかかるべきであろう。他人がそれで利益を出していると旨い事を聞かされても、である。
「人の商い、うらやむべからず」
※本間宗久(江戸時代の米相場師)著、「相場三昧伝」より
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